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●もはや「民法捨て」で合格することは難しい、その理由と対策
 宅地建物取引主任者試験(以下,宅建試験)は,大きく分けると「権利関係」「宅建業法」「法令上の制限・税,その他」という3つの分野から出題されます.宅建試験はすべて択一式(四択)で全50問出題され,平成18年試験では「権利関係」が16問,「宅建業法」も16問,「法令上の制限・税,その他」が18問出題されました.このうち,民法は「権利関係」から12問出題されています.宅建試験では,宅建業法とならぶ,重要科目となっています.ただし,民法は非常に膨大で,概念も難解なものが多いため,他分野とのバランスを考慮すると民法の目標得点は6割といわれています(対して条文数も少なく,比較的記憶事項の多い宅建業法の目標得点は8割とも9割とも言われています).

 一方,平成10〜12年試験における合格最低点は30点/50点満点(以下,満点同)でした.このため,受験生の間で極端な話,「民法を捨てる」(まったく試験勉強をしない)といったことが行われ,それで合格したケースもあったようですが,平成14年試験では36点(宅建試験始まって以来,初の35点を超えた合格点),平成15年試験では35点,平成16年試験では32点,平成17年試験では33点,平成18年試験では34点といったように,合格点が高得点化しており,受験業界でもこの傾向は続くと思われていますので,もはや「民法捨て」で合格することは難しいと思います.ここは,覚悟を決めて腰をすえて民法の学習にとりかかった方がよさそうです.

 そこで,ここでは「宅建試験における民法」という観点からまとめてみましょう.

●宅建試験で頻出する民法の項目
 平成14年試験から平成18年試験までの5回の宅建試験で,3回以上出題された民法の項目・テーマをあげてみましょう.項目・テーマの後のカッコ内の数字は出題回数です.まず,民法総則からは意思表示(4),代理(4),物権からは抵当権(4),所有権(3),債権からは債権と債務(4),保証(3),売買契約(4),賃貸借契約(4),不法行為(3),家族法からは相続(5)となっています.また,平成18年試験においては,過去一度も出題されなかったテーマから,「信義則・権利の濫用」が出題されました.平成17年試験においても,同様に過去一度も出題されなかったテーマとして,無効と取消,担保物権等が出題されています.ここ最近,過去出題されていない分野からも出題される傾向があります.この点は準備する上で注意が必要でしょう.いずれにせよ,宅建試験における民法は,各分野満遍なく出題されていますから,マイナーなテーマも含めて,全体について学習しておく必要があるといえるわけです.ただし,家族法については,親族に関する出題はありませんので,相続に絞った学習で問題ありません.


●宅建試験で出題される民法問題:
難しい問題にはこだわらず,他の問題で確実に得点することが重要
 それでは宅建試験における民法では,どんな問題が出題されるのか,みてみましょう.まず出題範囲については既述の通り,各分野から満遍なく出題されていますが,家族法の親族からの出題はありません.次に12題前後の出題ですから,難しい問題から易しい問題まで幅をもった出題がなされます.つまり,難しい問題にはこだわらず,それ以外の問題で確実に得点することが重要です.もっとも,難しい問題というのは,毎年,12題中2〜3題しか出題されていません(例えば平成18年試験でみてみると,問1,問3,問7が難度の高い問題といえます)ので,この点についてあまり神経質になる必要はないでしょう.

 

●宅建試験の特徴として,基本的な事例問題が出る
 さらに,出題形式でも宅建試験の特徴として,基本的ではありますが,事例問題が出ることがあげられます.事例問題とは,どのような問題でしょうか.例えば,一般の条文内容を問う問題であれば,「民法上の委任契約に関する次の記述のうち,民法の規定によれば誤っているものはどれか.」という問題文に,選択肢1が「委任契約は,委任者又は受任者のいずれからも,いつでもその解除をすることができる.ただし,相手方に不利な時期に委任契約の解除をしたときは,相手方に対して損害賠償責任を負う場合がある.」(以下省略)といった出題がなされます(平成18年試験 問9).これに対して,事例問題とは,「Aは, Bから借り入れた2,400万円の担保として第一順位の抵当権が設定されている甲土地を所有している.Aは,さらにCから1,600万円の金銭を借り入れ,その借入金全額の担保として甲土地に第二順位の抵当権を設定した.この場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか.」という問題文に,選択肢1が「抵当権の実行により甲土地が競売され3,000万円の配当がなされる場合,BがCに抵当権の順位を譲渡していたときは,Bに1,400万円,Cに1,600万円が配当され,BがCに抵当権の順位を放棄していたときは,Bに1,800万円,Cに1,200万円が配当される.」(以下省略)といった問題です(平成18年試験 問5).

 

●事例問題の場合,試験中に考えながら解くことが必要
 ご覧頂いてすぐおわかりなように,事例問題とは,より実践に即した出題で,そういった意味で単純に条文内容を問う問題よりも一段グレードの上の問題といえます(ただし,これは出題方法から考えた難易度の話で,実際はこれに出題内容の難易度も加味されて,その問題としての難易度が決まります).条文内容を問う問題というのは,極端な話,単純な記憶のチェックになりがちですが,事例問題の場合,試験中に考えながら解くことが必要です.ポイントは問題になっている法律関係を図にしてみることです.法律問題に関係する登場人物は誰か,そして,誰が,誰に対して,どういった権利義務関係になっているかを図にするわけです.こうしないとややこしい権利関係を把握するのに時間がかかるし,事実関係を混乱して思わぬミスをしないとも限りません.そのためにも図は有効なのですが,当然,いきなりうまく描けるようにはなりません.やはり一定の練習が必要です.加えて,民法の骨格が理解できていれば,より容易に描けるようになるでしょう.


●宅建試験の民法では、判例まで問われる
 ところで,民法の基本的な学習方法ですが,第1段階として全体像をおさえ,第2段階に各条文の内容を理解,ここまでが基本事項で,以降,判例の知識を身につけたりするものです.実は,宅建試験では,この判例の知識まで問われます.具体的には「〜関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば正しい(誤っている)ものはどれか」という形での出題です.平成18年試験では,12題中実に11題がこの形での出題でした(ちなみに平成17年試験では12題中8題でした).そういった意味で,宅建試験では,基本事項だけでは足りず,応用問題といってもよい判例に関する知識も身につけなければならないともいましょう.そもそも,判例学習とは最高裁判所の法律に関する解釈である判決について,学説上の解釈の立場とも比較し行うものなのですが,幸い宅建試験ではそこまでは要求されず,判例の知識を持っていれば,解ける問題です.それでも,判例とは「条文の解釈」ですから,本来的には,民法全体を理解し,次に各条文の内容をおさえ,その上にのっける形で判例の知識を位置づけるべきものなのです.つまり,先ほど「難しい問題」云々という表現を使いましたが,この判例の知識を問うレベルの問題が標準となるということです(このレベルの問題は「難しい」レベルではない点に注意してください).なお,問題文の「民法の規定」のみで解ける問題は,条文の内容理解のみで解ける問題のことです.

 以上が「宅建試験における民法」の概略です.

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