| はじめての法律勉強法
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まず,「憲法から始めるとよい」という意見から考えてみましょう.確かに,憲法は法の中では唯一,中学校から勉強しますね.皆さんも昔,「公民」で勉強された記憶があるかと思います.そういった意味で「憲法から始める」という意見には説得力があります.
●憲法は,法ではあるが,法律ではない
ここで,今までの説明の中で「後述します,後述します」と書いてきた事項についてお話します.「憲法は法ではあるが,法律ではない」ということについてですね.これは定義の問題なのですが,法律というのは,我が国唯一の立法機関である国会が制定した法のことで,その決め方は憲法に定められています.
●憲法は,法律の上位概念
つまり,憲法というのは法律の上位概念なのです.ちなみに,法律の下位概念は,内閣が制定する命令である「政令」,その下に各省・大臣が制定する命令である「省令」,さらにその下に地方公共団体が制定する「条例」といったものがあります.そして,こういった憲法・法律・政令・省令・条例などを含んだ広い概念が「法」というわけです.ここで,「上」とか「下」とかいう表現を使いましたが,実は法におけるこの上下関係は非常に厳格なもので,下位の法は,上位の法に反する規定を制定できません.仮に制定してもその部分は無効となります(一部,例外あり).こういった法の性質は「法の階層性」と呼ばれており,「法学」という学問領域で学ぶ事項です.お分かりいただけたでしょうか.「憲法は『法』ではあるが,『法律』ではない」.皆さんももう意味がおわかりですね.簡単ですね.
●憲法は,法律の上位概念:刑法を題材に考える
さて,憲法は法律の上位概念の法であると申し上げました.それは具体的にどのような意味かをもう少し深く考えてみましょう.
三つに絞られた法の一つ,刑法を題材に考えます.刑法という法律は,皆さんもドラマなどでご承知なように,殺人罪とか窃盗罪とかが規定されているあの法律です.
●刑法は国家権力が国民を規制する法律:ベクトルは国家権力から国民へ
刑法の特徴を一言で言うと「どういう行為が罪となるか,そしてその罪を犯した場合,どのような罰が科せられるかを規定した法律」となりましょうか.ここで考えていただきたいのは,罰するのは誰で,罰せられるのは誰かということです.常に罰するのは国家権力で,罰せられるのは国民ですね.そういった意味で,刑法は国家権力が国民を規制する法律であるといえますね.要はベクトルが国家権力から国民へと向いているわけです.
●民法は個人と個人の権利・義務関係を定めた法律
では,もう一つの残り,民法はどうでしょうか.民法は私法といって,個人と個人の権利・義務関係を定めた法律です.個人のどういった行為で権利や義務が発生し,消滅するか,といったことが規定されています.基本的に個々人がどういった契約を結ぼうと国家権力は基本的に関知しないというのが原則になっています.これを「契約自由の原則」といいます.
すると刑法が国家権力から国民にベクトルが向いているのと違うように思ってしまいがちですが,実はそうではありません.刑法と比べるとかなりゆるいのですが,民法もやはり国家権力から国民へとベクトルが向いているといってもよい性質を持っています.
確かに,契約自由の原則により,個人と個人はどのような内容の契約を結んでも自由です.しかし,そこには自ずと制限があります.例えば,血液や臓器の売買契約を結んでも問題ないのでしょうか,膨大な金利のもとに結ばれた消費貸借契約までも有効になるのでしょうか.詳細は省きますが,これらの契約は当然無効ですし,場合によっては国家権力が介入してくることもありえます.
●民法もベクトルは国家権力から国民へ
つまり,刑法に比べると確かに緩やかではありますが,国家権力から国民へとベクトルが向いているといってよいわけです.そういった意味で民法も刑法も共通といえます.両方とも国家権力が国民の暴走にブレーキをかけているわけですね.
●では国家権力にブレーキをかけるのは?
では,国家権力にブレーキをかける役割を担うのは誰でしょうか.時として国家権力も暴走することは歴史が証明しています.実は,この国家権力にブレーキをかける役割こそ憲法が担っているのです.確かに,憲法には様々な人権の規定があります.この意味は,国民にはこういった権利があるから,国家はそれを尊重しなければなりませんよ,ということなのです.つまり,憲法のみベクトルが国家権力に向いているわけですね.
こういった憲法の性質を考えてみると,その規定はどのような特徴があるといえるでしょうか.
●憲法の二つの規定
憲法の規定は大きく二つに分けられます.一つは人権,一つは統治機構です.まず具体的に国民に保障されている人権について規定がおかれ,次に統治機構について定め,国家権力が国民の人権を保障する機構となるよう定めているわけです.ただし,憲法ではあくまでも大きなくくりでの規定におさえ,細かい規定は各法律に定めています.そうしないと逆に抜け道の多い規定になってしまいます.いくら細かく規定しても,どうしても漏れがでてきます.それを避けるため,あえて大きなくくりでの規定にしているわけです.
●法律の中でも抽象度の高い憲法
しかし,「大きなくくりでの規定」とは,つまり,規定がどうしても抽象的になりがちです.時に法律に限らず,勉強とは,抽象的思考より具体的思考の方がはるかに理解しやすいものです.確かに法律学はもともと抽象的な思考が要求されるものではありますが,その中でもなるべく抽象度が低い,より具体的な事項から勉強していった方が早道といえます.つまり,もともと抽象的な法律学を学ぶ際,法律の中でも抽象度の高い憲法から勉強するのは避けた方がよいであろう,という話なわけです.ここは,やはりより日常的な問題に置き換えやすい民法か刑法から勉強した方がよさそうです.
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