民法887条
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「子及びその代襲者等の相続権」
(含 親族関係概説)
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民法887条【子及びその代襲者等の相続権】 @被相続人の子は,相続人となる. A被相続人の子が,相続の開始以前に死亡したとき,又は第八百九十一条の規定に該当し,若しくは廃除によって,その相続権を失ったときは,その者の子がこれを代襲して相続人となる.ただし,被相続人の直系卑属でない者は,この限りでない. B前項の規定は,代襲者が,相続の開始以前に死亡し,又は第八百九十一条の規定に該当し,若しくは廃除によって,その代襲相続権を失った場合について準用する.
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■長い条文ですが,日本語自体はそう難しくありません
これは長い条文ですね.こういう条文を見ると,以前の皆さんの中にはげんなりしていた方もいらっしゃったことでしょう.ただ,この講義を18回も受講した皆さんなら,いつものように丁寧に読んでいけばなんら問題ないということはもうご存知ですね.長い条文や難しい条文をみた時のアレルギーも少しずつとっていくようにしてください.
●第1項
第1項は,「被相続人の子は,相続人となる」という条文です.
これはまったく問題ありませんね.被相続人(ヒソウゾクニン),つまり「相続される人」の子は,相続人(ソウゾクニン),つまり「相続する人」になる,という規定です.
●第2項本文
第2項本文は,「被相続人の子が,相続の開始以前に死亡したとき,又は第八百九十一条の規定に該当し,若しくは廃除によって,その相続権を失ったときは,その者の子がこれを代襲して相続人となる」という条文です.
ちょっと文の構造がこみいっていますね.この文の場合,何が構造をややこしくしているかを考えると,結局は「又は」「若しくは」といった接続詞が多用されているところに由来します.パーツごとに考えてみましょう.
「又は」と「若しくは」の使い分けは大丈夫ですね.複数ある事項に段階があったり,レベルの違いがある,といったような場合には,最も大きな意味の語句のつながりやレベルには「又は」を使い,2番目以降の意味の語句のつながりやレベルには「若しくは」を使うというものでした.忘れてしまった方は用語マニュアルで御確認ください.
「又は」「若しくは」の使い方をふまえて文の構造を図にしてみましょう.
(A)「被相続人の子が,相続の開始以前に死亡したとき」
+
(B)「第八百九十一条の規定に該当し」(b1)+「廃除によって」(b2)
↓
(C)「その相続権を失ったとき」
↓
(D)「その者の子がこれを代襲して相続人となる」
つまり,(A)又は(B)〔(b1)若しくは(b2)〕により(C)のときは(D) という構造です.
(A)の内容は問題ないですね.書いてある通りです.(B)の内容から検討してみましょう.チャートにある通り,(B)は(b1)と(b2)という二つから成っています.(b1)は,「第八百九十一条の規定に該当し」とあります.891条の規定は下記のような条文です.
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民法891条【相続人の欠格事由】 次に掲げる者は,相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者。ただし,その者に是非の弁別がないとき,又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは,この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し,又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,撤回させ,取り消させ,又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿した者
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細かいことは省きますが,相続人の欠格事由を列挙した条文で,891条に列挙された事由に該当すると,相続人にはなれない,という規定です.
(b2)は,「廃除によって」とあります.ここで問題になるのは,「廃除」ですね.「廃除(ハイジョ)」とは,被相続人に対する虐待その他の著しい非行を理由として,遺留分を有する推定相続人をその地位から除外する制度のことです.
つまり,(b1)も(b2)も(B)については,相続人だった者が何らかの理由で相続人ではなくなった場合=相続権を失ったとき(C)のことだとお分かりかと思います.
(D)は,「その者の子がこれを代襲して相続人となる」というわけです.これは読んだ通りです.
まとめましょう.
「被相続人,相続される人の子が,相続の開始以前に死亡したとき」(A),又は,「<民法891条【相続人の欠格事由】に該当したり(b1)>,若しくは<廃除によって(b2)>」(B),「相続権を失ったとき」(C),「その者の子がこれを代襲して相続人となる」(D)というわけです.「その者の子」とは,「被相続人の子の子」ということですから,「被相続人」からみれば「孫」にあたる人のことです.つまり,被相続人の子が何らかの理由で相続権を失った場合は,被相続人の子の子,被相続人からみた場合の孫が相続人になる,という規定なわけです.このような相続を「代襲相続(ダイシュウソウゾク)」と言います.
●第2項但書
第2項但書は,「ただし,被相続人の直系卑属でない者は,この限りでない」という条文です.
第2項本文の「被相続人の子が何らかの理由で相続権を失った場合は,被相続人の子の子,被相続人からみた場合の孫が相続人になる」という規定は,被相続人の直系卑属でない者には,適用されない,というわけです.問題は,「直系卑属」ですね.確かに宅建試験には家族法において相続のみが出題され,親族は出題されませんが,この程度の知識は常識ともいえますので,少し説明しましょう.

●親族関係概論
まず,「親等」という用語をおさえてください.「親等(シントウ)」とは,親族関係の濃淡遠近を表す単位です.親子一代が単位1です.つまり,自分を基準に考えて,父親母親が1親等,おじいさんおばあさんが2親等,曾おじいさん曾おばあさんが3親等といった具合です.同様に自分を基準に子どもが1親等,孫が2親等,曾孫が3親等です.
さて,この例で「父母→祖父母→曾祖父母」といった自分より年上グループを「尊属(ソンゾク)」,「子ども→孫→曾孫」といった年下グループを「卑属(ヒゾク)」というのです.では,自分を中心に尊属と卑属を世代順に並べてみましょう.「曾祖父母→祖父母→父母→自分→子ども→孫→曾孫」とまるで1本の線で繋がったように各世代が揃いましたね.この縦の流れを「直系(チョッケイ)」というのです.
ここで「縦の流れ」という言葉が出てきましたので,次に「横の流れ」ともいうべき関係をみてみましょう.兄弟姉妹(ケイテイシマイ)のことです.これを「傍系(ボウケイ)」といいます.傍系の場合は親等の数え方もちょっと違います.一方から共同の始祖に遡り,他の一方に下がるまでの世代数を数えて求めることになります.言葉で書くと非常に複雑なのですが,実際にやってみると簡単です.具体例を挙げましょう.あたなとあなたのお姉さんは何親等でしょうか.「一方(あなた)から共同の始祖(あなたの御両親)に遡り,他の一方(あなたのお姉さん)に下がるまでの世代数」ということになります.「あなたから共同の始祖(御両親)」に遡って1世代,「共同の始祖(御両親)からあなたのお姉さん」に下がって1世代,1世代+1世代で合計2世代,つまり2親等が正解です.もう一つやってみましょう.あなたとあなたの伯母さんは何親等でしょうか.同じように考えます.「一方(あなた)から共同の始祖に遡り,他の一方(あなたの伯母さん)に下がるまでの世代数」となりますが,問題は「共同の始祖」です.「伯母さん」というのは,あなたの御両親どちらかのお姉さんですから,あなたの御両親は兄弟姉妹の関係にあたり,「始祖」ではありません.この場合,「共同の始祖」とは,あなたの御両親のどちらかとその人のお姉さんである人の両親,つまりあなたにとって「祖父母」にあたる人になるのです.つまり,「一方(あなた)から共同の始祖(あなたの祖父母)に遡り,他の一方(あなたの伯母さん)に下がるまでの世代数」ということです.すると,あなたからあなたの御両親へいって1世代,あなたの御両親からその御両親,つまりあなたの祖父母にいって1世代,ここまでで2世代ですね.そして,あなたの祖父母からあなたの伯母さんに下がって1世代,合計3世代ですから,あなたとあなたの伯母さんの関係は,3親等ということになるのです.できましたか?
ちょっとここまでの登場人物を整理してみましょう.「曾祖父母・祖父母・父母・自分・子ども・孫・曾孫・兄弟姉妹・おじおば・おいめい」といったところでしょうか.皆さんは,この登場人物に共通する性質が分かりますか?それは,血の繋がった仲,ということです.この「血の繋がった仲」のことを「血族(ケツゾク)」というのです.
ところで,夫にとっての妻,妻にとっての夫,配偶者は何親等でしょうか?いかがですか?実は配偶者に親等はありません.配偶者は配偶者ですからこの点,おさえておいてください.
今,血族の話を中心に進めましたが,あなたの配偶者にもあなたの場合と同様に祖父母・父母・兄弟姉妹・おじおばといった関係の人がいるはずですね.これらの人々とあなたやあなたの親族はもともと他人でした.しかし,あなたとあなたの配偶者が婚姻したことによって親戚関係になったわけです.このため,あなたの配偶者の父母・兄弟姉妹をはじめ親戚の人たちは,あなた方の「婚姻」によって親族になったということで「姻族(インゾク)」と呼ぶのです.
以上が親族関係の基本の基本です.お分かりいただけましたか.

●第2項但書に戻ります
繰り返しますが,第2項但書は,「ただし,被相続人の直系卑属でない者は,この限りでない」という条文でした.「直系卑属」がひっかかったわけですが,皆さん,もう大丈夫ですね.「直系」とは,「血の繋がった仲」でした.「卑属」は,自分より年下のグループでした.つまり,「直系卑属」とは,自分の子,孫のように血の繋がった仲のうち,年下のグループを指したわけです.
まとめましょう.第2項本文の「被相続人の子が何らかの理由で相続権を失った場合は,被相続人の子の子,被相続人からみた場合の孫が相続人になる」という規定は,被相続人の直系卑属=自分の子,孫のように血の繋がった仲のうち,年下のグループでない者には,適用されず,相続人にならないというわけですから,自分の子,孫のように血の繋がった仲のうち,年下のグループが相続人になる,というわけですね.
●第3項
第3項は,「前項の規定は,代襲者が,相続の開始以前に死亡し,又は第八百九十一条の規定に該当し,若しくは廃除によって,その代襲相続権を失った場合について準用する」という条文です.
こちらも文の構造から考えてみましょう.
主部は,「前項の規定は」で,前項はとは,もちろん,「被相続人の子が何らかの理由で相続権を失った場合は,被相続人の子の子,被相続人からみた場合の孫が相続人になる」という第1項の規定は,被相続人の直系卑属=自分の子,孫のように血の繋がった仲のうち,年下のグループでない者には,適用されず,相続人にならない」という第2項をさします.この第2項がどうしたかというと,述語の「準用する」というわけです.しかし,この文の難しいところは,この「前項の規定は,準用する」という主述関係が,さらに「代襲者が」(主語)+「代襲相続権を失った」(述部)というもう一つの主述関係をサンドイッチのようにはさんでいるところです.加えて,その間にはまた「又は」「若しくは」がありますね.以上をふまえて図にしてみましょう.
(大主部)前項の規定は
+
(小主語)代襲者が
+
(A)相続の開始以前に死亡し
+
(B)第八百九十一条の規定に該当し(b1)+廃除(b2)によって
+
(小述部)その代襲相続権を失った場合について
+
(大述語)準用する
891条については説明済ですね.「相続人の欠格事由」を定めた条文でした.「廃除」も説明済ですね.要は,両者とも「相続人だった者が何らかの理由で相続人ではなくなった場合」でした.「代襲相続」も説明しました.
まとめましょう.
「被相続人の子が何らかの理由で相続権を失った場合は,被相続人の子の子,被相続人からみた場合の孫が相続人になる」という第1項の規定は,「被相続人の直系卑属=自分の子,孫のように血の繋がった仲のうち,年下のグループでない者には,適用されず,相続人にならない」という第2項は,代襲者が何らかの理由で相続人ではなくなった場合=代襲相続権を失った場合について準用する,というわけです.
続く
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