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民法 条文解釈

民法177条

 

「不動産に関する物権の変動の対抗要件」
(付 民法86条「不動産及び動産」)

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民法177条【不動産に関する物権の変動の対抗要件】 不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない.

■不動産に関する物権の変動の対抗要件
 条文のタイトルを見ると,「不動産に関する物権の変動の対抗要件」とあります.「物権の変動」とは,すなわち「物権変動」のことで,具体的には物権の発生・変更・消滅のことでした.

■「不動産に関する物権の得喪及び変更」
 次に,条文の検討に入りましょう.
 最初に,「不動産に関する物権の得喪及び変更」とあります.
 皆さん,今更の質問ですが,「不動産」の意味は大丈夫ですか?不動産とは何ですか?実は,このことも民法にちゃんと規定されているのですよ.民法86条です.付録で86条についても簡単に説明します.

民法86条【不動産及び動産】 @土地及び土地の定着物は,不動産とする. A不動産以外の物は,すべて動産とする. B無記名債権は,動産とみなす.

 86条では,第1項に,不動産とは,土地と建物のような土地の定着物と定義されています.両方とも動かない(=不動)ですね.第2項を見ると不動産以外の物は「動産」だ,と規定しています.ですから,机,椅子,洋服,靴といったものから鉛筆1本,消しゴム1個に至るまで動産というわけです.第3項については,今回のテーマからあまりにも話が飛びますので,ここでは説明を省略します.

 話を続けます.「不動産に関する物権の得喪及び変更」という表現の検討に戻ります.「得」はもちろん「得る」ですから,「発生」のことで,「喪」は「喪くす」ですから「消滅」ですね.それに「変更」というわけです.
 それでは,当然次の話は「物権の発生・変更・消滅」とは,どのようなことか,ということになります.
 aさんが,家を建てた場合,aさんにはその家の所有権が発生します(厳密には,aさんが,家を建てた建築会社等に金を払うことによって,所有権がaさんに移転してくるのですが,例によって細かいことは気にせず話を進めます).
 同様に考えると,消滅についても予想がつくのではないでしょうか.例えば,aさん所有の家が火事で全焼してしまった場合,aさんのこの家に関する所有権は消えてしまいます.これが消滅ですね.
 物権の変更というのは,ちょっとイメージしにくいですね.具体的には,地上権の存続期間を変更する,とか,抵当権を第1順位から第2順位に変更する,といった例があげられます(今ひとつピンとこないという人も気にしないでください.この件は本肢の本質とは関係ない部分です.ここでとまらず,先に進んで問題ありません).

■「不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従い」
 この部分は,現時点では,まったく気にしなくて結構です.要は「関係する法律に従って」という意味だな,という認識で結構です.

■「その登記をしなければ,第三者に対抗することができない」
 ここは,重要です.特に「登記」は,非常に重要な法律用語です.しっかり,理解するようにしてください.
 対して,「第三者に対抗することができない」というのは,もうお馴染みですね.「当事者以外に当該契約に関わってきた人に主張できない」という意味でした.ただし,この「第三者」に関しては,非常に重要な問題を含むテーマなのですが,ここでは説明を割愛します.詳細はこちら

 「登記(トウキ)」とは,この場合は「不動産登記」のこと(他に「商業登記」というのもあります)で,不動産に関する所有権をはじめとする様々な物権の所在を公示する制度のことです.そして登記が誰にあるのかを示すのが「不動産登記簿」というわけです.ここでは触れませんが,「公示の原則」「公信の原則」といった概念も,あやふやな方は確認しておいてください.

 これで「登記」の概念はわかりました.すると次に問題になるのは,なぜこのような制度があるのか,ということですね.これについて説明するには,ちょっと話が長くなりますが,しばらく御辛抱ください.

 物権は一つの物に対しては内容の矛盾するような権利は複数存在できない,つまり,一つの物に対しては同一内容の支配権は一つしか成立しないという考え方があり,これを「一物一権主義」と言いました.甲という土地の所有権をすべて所有するaさんという人がいれば,他に甲地の所有権を持つ人はいない,というお話です.この点は皆さん,御納得いただけると思います.このため,「物権の排他性」などといわれる自分の物は自分だけで独占して支配できる,という性質があるわけです.しかし,これは制度の話で,実際に,甲地の所有権をaさんもbさんも主張した場合はどうするのか,という問題が残りますね.こういう時のためにルールを決めておかなければなりません.このためには,まず,物について,誰が,いかなる物権をもっているのかを明らかにし,誰でもわかるように外部に公示されている必要があるわけです.このため,民法は,このような公示方法を動産については占有,不動産については登記と定めました.なお,「占有」「登記」といった条件を備えている方を「対抗要件を備えている」といいます.
 「占有(センユウ)」とは,簡単に言うと実際に「持っている」という状態をさし,「登記」とは,「不動産登記簿」への記録を意味します.昔は文字通り「不動産登記簿」という紙の帳簿への記載によってなされていましたが,2004年に民法177条にも書いてある不動産登記法が改正され,すべて磁気ディスクをもって調製することになりました.要は,この不動産登記簿に記録されることを「登記する」というわけです.
 条文では,この「登記」をしなければ,「第三者に対抗することができない」,すなわち,「当事者以外に当該契約に関わってきた人に,『この土地は自分の物だ』という主張ができない(=ということは,第三者が『この土地は自分の物だ』と主張してきたら,反論できず,その第三者のものに決定してしまう)」ということになるわけです.

 具体的に説明しましょう.
 まず,動産についてです.aさんは自分の持っているパソコンをbさんに50,000円で売ると約束しましたが,その後,cさんが自分は100,000円で買うと言ってきました.このため,aさんはcさんに売ろうと勝手に決めて,その場で100,000円を受け取ると同時に,パソコンもcさんに渡してしまいました.当然,おさまらないのはbさんですね.自分に売ると言ったじゃないか,というわけです.皆さん,ご承知の通り,a - b間の売買契約もa - c間の売買契約も,契約自体は有効に成立しています.特に先に成立したa - b間の契約を優先する,という規定もありません.ここで問題にされるのは,「先に占有した方はどちらか」ということで,この場合,cさんがbさんより先に当該パソコンの引渡しを受けていますから,先に占有したのはcさんということになります.従って,このパソコンの所有権はcさんに移る,というわけです.bさんは,aさんに対して債務不履行等の責任追及をするか,どうしてもそのパソコンが欲しければ,aさんへの責任追及とは別に,今度はcさんにそのパソコンを売ってもらうよう交渉していくしかないわけです.

 以上が,動産の例ですが,これで不動産の場合もおおよそ推測できますよね.念のため,動産の例と似た事例で説明しましょう.
 aさんは自分の所有する甲地をbさんに500万円で売ると約束しましたが,その後,cさんが自分は1,000万円で買うと言ってきました.このため,aさんはcさんに売ろうと勝手に決めて,その場で1,000万円を受け取ると同時に,cさんに対して甲地の所有権移転登記も行いました.当然,おさまらないのはbさんですね.自分に売ると言ったじゃないか,というわけです.皆さん,ご承知の通り,a - b間の売買契約もa - c間の売買契約も,契約自体は有効に成立しています.特に先に成立したa - b間の契約を優先する,という規定もありません.ここで問題にされるのは,「先に登記した方はどちらか」ということで,この場合,cさんがbさんより先に甲地の所有権移転登記をしていますから,先に登記したのはcさんということになります.従って,甲地の所有権はcさんに移る,というわけです.bさんは,aさんに対して債務不履行等の責任追及をするか,どうしても甲地が欲しければ,aさんへの責任追及とは別に,今度はcさんに甲地を売ってもらうよう交渉していくしかないわけです.

 いかがでしょうか.お分かりいただけましたね.ここで,最後に,民法177条をわかりやすくまとめておきましょう.
 「不動産に関する物権変動は,関係する法律の定めるところに従って,先に登記をしなければ,当事者以外に当該契約に関わってきた人に『自分の土地である』という主張はできない(=ということは,第三者が『この土地は自分の物だ』と主張してきたら,反論できず,その第三者のものに決定してしまう)」
 
 というわけです.

 続く

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  4-A. 民法126条
【取消権の期間の制限】
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  6-A. 民法13条 第1項・第4項
【保佐人の同意を要する行為等】
  6-B. 民法120条 第1項
【取消権者】
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8. 選択肢3を見る
  8-A. 民法370条
【抵当権の効力の及ぶ範囲】
9. 再び選択肢3を見る
10. 選択肢4を見る
  10-A. 「権利能力なき社団」とは
  10-B. 重要判例 最判昭47.6.2
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12. 選択肢5を見る
  12-A. 民法177条
【不動産に関する物権の変動の対抗要件】
13. 再び選択肢5を見る

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