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行政書士講座「過去問に学ぶ民法」 バックナンバー
第1回 テーマ「意思表示(民法総則1)」 平成14年(2002年)度行政書士試験問題27(問題文表示

9.選択肢5を見る


選択肢5. 心裡留保は,表意者が内心的効果意思と表示とが一致しないことを知っている場合であるが,錯誤と虚偽表示はその不一致を知らない場合である.

■心裡留保,錯誤,虚偽表示の正確な概念把握
 肢にある「心裡留保」「錯誤」「虚偽表示」については,規定条文に関しても,各々の概念についても,選択肢2を中心に,詳しく説明してきました.従って,ここまで講義を熟読されてきた皆さんにとっては,「心裡留保」「錯誤」「虚偽表示」についてはもちろん,「内心的効果意思」「一致しないことを知っている」「不一致を知らない」等の表現も,その意味についてはお分かりのことと思います.したがって,ここでは,これらの細かい説明の重複はさけたいと思います.

■心裡留保
 まず「心裡留保」についてですが,民法93条に規定されていました.説明の詳細は「民法93条の条文解釈」及び「本講座5 - A」をご覧頂き,ここでは条文だけもう一度挙げるに留めます.

民法93条【心裡留保】 意思表示は,表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても,そのためにその効力を妨げられない.ただし,相手方が表意者の真意を知り,又は知ることができたときは,その意思表示は,無効とする.

 前半部をわかりやすい表現におきかえると,下記のようになります.
 「表意者(意思表示をする人)が(自分で自分の意思表示が)嘘だと知って意思表示をしても,(その意思表示は)有効だ」となります.

 よろしいでしょうか,皆さん,「表意者(意思表示をする人)が(自分で自分の意思表示が)嘘だと知って意思表示」をすることが心裡留保で,心裡留保の場合は,その意思表示は有効だと規定しているわけです.「表意者(意思表示をする人)が(自分で自分の意思表示が)嘘だと知って」いる状態というのは,要は,表意者Aが甲という土地を売る気がさらさらない(内心的効果意思)のに,以前より甲地を欲しがっていたBに「甲地を売ってあげよう」言ってしまう(表示)ことで,当然,表意者Aは,自分では甲地を売る気が全然ないのに,「売ってあげよう」と意思表示したことを知っています.つまり,「心裡留保は,表意者が内心的効果意思と表示とが一致しないことを知っている」とする本肢のこの部分は正しい,といえます.

■錯誤
 同様に,錯誤の場合と虚偽表示の場合も検討してみましょう.
 まず,錯誤です.これについても詳細は本講座5−Dに譲り,ここでは,条文を挙げるに留めます.

民法95条【錯誤】 意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする.ただし,表意者に重大な過失があったときは,表意者は,自らその無効を主張することはできない.

 例によって,前半部をわかりやすい表現に改めると下記のようになりました.

 「意思表示は,契約等の重要な部分(=要素)に錯誤あった場合は,無効とする.」

 錯誤とは,勘違いのことでした.「近々に地下鉄が通る予定だと聞いて,当該土地を購入したが,地下鉄が通るというのは勘違いだった」というのが,典型例です.この場合を考えてみると,内心的効果意思は,「近々に地下鉄が通る予定のこの土地を購入しよう」ということになるわけです.しかし,この「地下鉄が通る予定」というのが,表意者の勘違いなわけですから,この表意者が「この土地を購入します」という表示は,表意者以外の人には,「この地下鉄が通る予定なんかない土地を購入します」と聞こえるわけですね.そういった意味で,内心的効果意思と表示は不一致です.しかも,表意者の勘違いに起因していますから,この不一致について表意者は,まだ知らない,ということになりますね.
 以上をふまえて肢に戻りましょう.
 肢には「錯誤と虚偽表示はその不一致を知らない場合」とあり,ここに言う「その」とは,「(表意者の)内心的効果意思と表示」を指します.従って,つなげると,「錯誤と虚偽表示は(表意者の)内心的効果意思と表示の不一致を知らない場合」となります.とすると,肢の錯誤の部分も正しいということがわかります.

■虚偽表示
 では,虚偽表示に移りましょう.これについても詳細は本講座5−Bに譲り,ここでは,条文だけを挙げましょう.

民法94条【虚偽表示】 @相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする. A前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない.

 例によって,第1項をわかりやすい表現に改めると下記のようになりました.

 「相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする」,要は,表意者と相手方が通じて,つまり通謀して=グルになってした嘘の意思表示は無効だ,というわけでした.

 虚偽表示とは,別名「通謀虚偽表示」と言って,二人がグルになって,嘘の表示を行うというものでした.典型的な具体例は,「借金取りから逃れるために,AがBに頼んで,自分の唯一の財産である土地について,A−B間に仮装売買を行う」というものでした.そういった意味で,売る気もない自分の土地を売ると表示していますから,心裡留保に似ています.しかし,両者の決定的違いは,虚偽表示には,グルの仲間のBがいるところです.すると,先に検討したように,心裡留保も虚偽表示も,内心的効果意思(土地を売る気はない)と表示(その土地を売ろう)は,不一致で,かつ,その不一致を表意者が知っている(虚偽表示では,グルの相手Bも知っています)ということになります.
 すると,肢には「錯誤と虚偽表示はその不一致を知らない場合」とあり,ここに言う「その」とは,「(表意者の)内心的効果意思と表示」を指しました.従って,つなげると,「錯誤と虚偽表示は(表意者の)内心的効果意思と表示の不一致を知らない場合」となります.とすると,肢の虚偽表示に関する部分は誤りということがわかります.
 従って,本肢は妥当でない=×ということになり,妥当なもの=○を選ぶ,本問の答えにはなりえず,やはり,正解は選択肢4ということが確認されました.

 さて,今回の講義は以上です.今回の問題は,各概念の比較的細かい知識が必要でしたね.今後もこのようなやり方で講義を進めていく予定です.

 お疲れ様でした.
 次回,第2回(5/19更新)のテーマは「制限行為能力者(民法総則2)」の予定です.

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民法条文の読み方 問題文表示
1. テーマ「意思表示(民法総則1)」
2. 問題文(H14行政書士問題27)
3. 問題文から、ここまでわかる

4. 選択肢1を見る
5. 選択肢2を見る
 5-A. 民法93条【心裡留保】
 5-B. 民法94条【虚偽表示】
   5-C. 民法93条と94条の違い
 5-D. 民法95条【錯誤】
  5-E. 民法96条【詐欺又は強迫】
  5-F. 民法93条-96条
6. 再び選択肢2を見る
7. 選択肢3を見る
8. 選択肢4を見る
9. 選択肢5を見る

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