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行政書士講座「過去問に学ぶ民法」 バックナンバー
第1回 テーマ「意思表示(民法総則1)」 平成14年(2002年)度行政書士試験問題27(問題文表示

8.選択肢4を見る


選択肢4. 本人が強迫を受けて代理権を授与した場合には,代理人が強迫を受けていないときでも,本人は代理権授与行為を取り消すことができる.

■本肢を解くのに「代理」の知識が必要か?
 肢を読んで,すぐ目に入ってくるのが,「代理権を授与」「代理人が」「代理権授与行為」といった言葉ですね.一見,「代理」の知識も必要なのではないか?と思ってしまいますが,本肢を解くのに,細かい代理の知識は必要ありません.もちろん,「意思表示」に関する問題に「代理」を絡ませてくる,といった出題は,事実,なされます.しかし,本問は違う,ということですね.代理に関するごく基本的な知識(「代理とはどういった制度か」といった知識)があれば,下記ポイントにさえ気づけば,問題はないと思います.
 そのポイントというのは,ここで問題となっている「代理権授与行為」は「法律行為」だ,と気づくことなのです.すると,次の問題は「法律行為」とは何だ?ということですね.

■法律行為とは
 先ほどの弁当の例で説明しましょう.あなたが「唐揚げ弁当が欲しい」と思った時,どうしますか?勝手に店先から黙って持ってきてしまいますか?そんな人はいませんね.普通は,弁当屋さんに行って,唐揚げ弁当を買うわけですよね.この「買う」という行為に至るまでの詳細を「6.再び選択肢2を見る」で学習したわけです.
 すなわち,あなたは,まず「お腹がすいたから,弁当でも食べよう」と思う(動機)わけですね.次に「今日の昼は唐揚げ弁当にしよう」と考え(効果意思),「お弁当屋さんに行って,唐揚げ弁当くださいと表示しよう(=言おう)」と思う(表示意思),そして,いよいよお弁当屋さんで「唐揚げ弁当ください」と表示する(表示行為)わけです.この一連の流れの中で(1)効果意思,(2)表示意思,(3)表示行為の3段階を「意思表示」と言いました.そして,この意思表示を経て,相手方(この場合は,弁当屋のおじさん)に,あなたの意思(「唐揚げ弁当を買うつもりだ」という考え)が到達するわけです.
 あなたの唐揚げ弁当を買う,という行為は,民法的に言うと,「唐揚げ弁当に関して,弁当屋と売買契約を締結する」ということになります(詳細は「債権各論」で勉強します).そして,この売買契約を有効に成立させるためには,「申込」と「承諾」が必要なのです.
 「申込」というのは,この場合,あなたの弁当屋さんに対する「唐揚げ弁当ください」という意思表示のことです.一方,「承諾」は,あなたの「申込」に対する弁当屋の「はい,毎度」といった,申込みの内容を承諾する意思表示のことです.以上で,唐揚げ弁当に関するあなたと弁当屋さんの間での売買契約は有効に成立しました.注意していただきたいのは,契約が成立するのに契約書等は不要だということです.売買契約の場合は,この「申込」と「承諾」という二つの意思表示の内容が一致することだけで契約は有効に成立します.このような契約を「諾成契約(ダクセイケイヤク)」といいます(詳細はまたの機会に説明します).
 ところで,そもそも売買契約とはどのような契約でしょうか?もともと弁当屋さんの財産であった唐揚げ弁当を,あなたと弁当屋さんの「申込」と「承諾」の一致を条件に,あなたが対価であるお金を弁当屋さんに渡す代わりに,唐揚げ弁当を入手するということですね.要は,お金を媒介にして,唐揚げ弁当の所有権が弁当屋さんからあなたに移った(「法律効果」又は単に「効果」と言います),ということです.その条件(「法律要件」又は単に「要件」と言います)が「申込」と「承諾」の一致だったわけですね.
 ただし,これらのことは自然に決まったわけではありません.社会秩序を維持するために,人間が制度として人工的に作り出したものです.あなたが「唐揚げ弁当を入手したい(「効果」ですね)と思ったら,店から黙って持ってくるのではなく,申込を行い,弁当屋の承諾と一致したら(「要件」ですね),お金と引換えに唐揚げ弁当を入手する(売買契約の成立)ことにしよう,と決めたわけです.民法的に言うと,あなたがある効果を欲した時,要件を備えることにより,権利が移転して(所有権というのはもちろん,権利の一種です)その効果を実現させることができるというわけです.そして,人工的に作られた制度にのっとり,この権利を移転させるために行われる行為を「法律行為」というのです.対して,権利の移転を伴わない行為を「事実行為」と言って,区別しています.

■再び選択肢の検討に戻ります
 以上をふまえた上で,もう一度,選択肢をご覧ください.

選択肢4. 本人が強迫を受けて代理権を授与した場合には,代理人が強迫を受けていないときでも,本人は代理権授与行為を取り消すことができる.

 代理権授与行為とは,法律行為だ,というお話をしました.二つの言葉を入れ替えてみましょう.

 本人が強迫を受けて行った法律行為の場合には,代理人が強迫を受けていないときでも,本人は当該法律行為を取り消すことができる.

 となりますね.以上をふまえて,もう一度民法96条1項をご覧ください.第1項の条文だけ抜き出してみましょう.

民法96条【詐欺又は強迫】 @詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる.

 ご覧のように,民法96条第1項では,代理の場合は云々,といったように細かい規定にはなっていません.要は何であれ,それが詐欺や強迫によってなされた意思表示であれば,その意思表示は取消すことができる,と規定されているわけです.ということは,当然,その意思表示に基づいてなされた法律行為も取消すことができる,ということになるわけです.
 さて,再び,「法律行為」に書き換えた選択肢をご覧ください.

●「法律行為」に書き換えた選択肢の検討

 「本人が強迫を受けて行った法律行為の場合には,代理人が強迫を受けていないときでも,本人は当該法律行為を取り消すことができる.」

 まず,冒頭に「本人が強迫を受けて行った法律行為の場合には,」とあります.つまり,この時点でこの法律行為は取消し可能であることがわかります.
 次に「代理人が強迫を受けていないときでも,本人は当該法律行為を取り消すことができる」という部分ですが,後段の「本人は当該法律行為を取り消すことができる」については,冒頭部分の説明と一致しますから,問題ありませんね.では,「代理人が強迫を受けていないときでも」の部分はいかがでしょうか?
 そもそも「代理」という制度はどのような制度であったかを思い出していただきたいのです.代理とは,本人が代理権を授与した範囲内で顕名の後,代理行為を行えば,その効果は本人に帰属する,という制度でしたね.ポイントは,代理人という他人が行った行為の効果が本人に帰属する,という点です.従って,あくまでもその行為に責任を持つのは本人なのですね.つまり,本肢でも本人が強迫を受けていれば,代理人が強迫を受けていようといまいと結論においては関係ない,ということになるのです.
 お分かりいただけたでしょうか.要は,本人が強迫を受けて行った法律行為というのは,本人は取消すことができる,ということになるのです.

 以上をふまえて選択肢を見ると,選択肢にも「本人は代理権授与行為を取り消すことができる」とありますから,本肢は妥当=○ということがお分かりいただけたかと思います.また,本問は,妥当=○の選択肢を答える問題ですから,正解は本肢,選択肢4ということになるわけです.
 さて,以上で答えがでたわけですが,念のため,残された選択肢5も検討しておきましょう.

 続く

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1. テーマ「意思表示(民法総則1)」
2. 問題文(H14行政書士問題27)
3. 問題文から、ここまでわかる

4. 選択肢1を見る
5. 選択肢2を見る
 5-A. 民法93条【心裡留保】
 5-B. 民法94条【虚偽表示】
   5-C. 民法93条と94条の違い
 5-D. 民法95条【錯誤】
  5-E. 民法96条【詐欺又は強迫】
  5-F. 民法93条-96条
6. 再び選択肢2を見る
7. 選択肢3を見る
8. 選択肢4を見る
9. 選択肢5を見る

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