| 第1回 テーマ「意思表示(民法総則1)」 |
平成14年(2002年)度行政書士試験問題27( 問題文表示) |
7.選択肢3を見る
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選択肢3. 動機の錯誤は,表示意思と表示との不一致を表意者が知らない場合がある.
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■動機の錯誤
先ほど,錯誤に関する条文,民法95条をご覧頂きましたが,その条文には「要素の錯誤」という言葉が出てきました.「重要な部分の錯誤」という意味でした.では,ここにいう「動機の錯誤」とは何でしょうか.
「動機の錯誤」とは,内心的効果意思を形成する過程としての動機に錯誤があることをいうとされています.
前項で,下記のような意思表示の流れの図を書きましたが,これで説明しましょう.
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A.動機→B.意思表示(b1.効果意思→b2.表示意思→b3.表示行為)→C.相手方に到達
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要は,上記図で言うと,Aとb1の間に錯誤があった場合を「動機の錯誤」と言うわけです.ちなみに,b1とb2の不一致を「内容の錯誤」,b2とb3の不一致を「表示の錯誤」と言いますので,あわせて覚えておいてください.
「動機の錯誤」ですが,これを先の具体例で説明すると,先の例では「12時になったから,お昼を食べよう」とか,「お腹がすいたから,弁当でも食べよう」と思ったことが動機だ,とお話しました.加えて,「今日の昼は唐揚げ弁当にしよう」と思うことが,効果意思ということでした.
とにかく,動機において「弁当を食べよう」と思い,効果意思において,「唐揚げ弁当にしよう」と思ったわけですが,その間には,「なぜ唐揚げ弁当か」という問題があるかと思います.それは例えば,「今日は唐揚げ弁当が特売である」とか「今日は唐揚げ弁当の唐揚げの数がいつもより多い」とか,何か理由があるわけです.要は,ここに錯誤=勘違いがあった,というわけです.ですから,事実は「今日特売なのは,唐揚げ弁当ではなく,鮭弁当だった」とか,「唐揚げ弁当の唐揚げの数がいつもより多いのは昨日だった」といったような場合です.つまり,「だったら,昼飯は唐揚げ弁当にはしなかったよ」という事情ですね.これが「動機の錯誤」です.他の例としては,絵画の例等が挙げられます.つまり,動機において,「この絵画が欲しい」と思い,効果意思において「この絵画を購入しよう」と思うわけですね.この動機と効果意思の間には当然のことながら,この「絵画が本物である」という前提があります.逆に,この絵画が偽物であったならば,この絵画を買おうとは思わないわけですね.効果意思をつくる動機に,偽物を本物と勘違い(=錯誤)した欠陥がある,というわけです.
以上で,「動機の錯誤」という概念がお分かりいただけたかと思います.
■「表示意思と表示との不一致を表意者が知らない」
それでは,以上をふまえて,肢の後半,「表示意思と表示との不一致を表意者が知らない」部分を検討してみましょう.
●「表示意思と表示との不一致」
再び,下図をご覧ください.
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A.動機→B.意思表示(b1.効果意思→b2.表示意思→b3.表示行為)→C.相手方に到達
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ここでは,「動機の錯誤」の場合.b2.表示意思とb3.表示行為の不一致を表意者が知らないか否かということが問題となっています.まず,「b2.表示意思とb3.表示行為の不一致を表意者が知らない」というのは,どういう事態かということを具体的に考えてみましょう.またまた先の弁当の例で考えます.
「お弁当屋さんに行って,唐揚げ弁当くださいと表示しよう(=言おう)」と思うことが「表示意思=その行為を表示しようと思うこと」で,お弁当屋さんで「唐揚げ弁当ください」と表示することを「表示行為=その行為をしますと表示すること」と言いました.
この場合,「b2.表示意思とb3.表示行為の不一致」というわけですから,「お弁当屋さんに行って,唐揚げ弁当くださいと表示しよう(=言おう)」と思ったにも関わらず,実際に口に出たのは「鮭弁当ください」だった,ということです.あるいは,「今日は腹が減ってるから唐揚げ弁当2個くださいと表示しよう」(表示意思)と思っていたのに,実際には,いつも通り「唐揚げ弁当一つください」(表示行為)と表示してしまった,という場合です.
●「不一致を表意者が知らない」
そして,この肢では,この(表示意思と表示行為の)不一致を表意者が知らない,といっています.すなわち,「お弁当屋さんに行って,唐揚げ弁当くださいと表示しよう(=言おう)」と思ったにも関わらず,実際に口に出たのは「鮭弁当ください」だった.しかも,本人(表意者)は,この(唐揚げ弁当を買おうと思ったのに,鮭弁当ください,と言ってしまったという)不一致に気づいていない,あるいは「今日は腹が減ってるから唐揚げ弁当2個くださいと表示しよう」(表示意思)と思っていたのに,実際には,いつも通り「唐揚げ弁当一つください」(表示行為)と表示してしまったにもかかわらず,その(唐揚げ弁当一つと二つ)不一致に気づいていない,というわけです.
■「一般的な錯誤」と「動機の錯誤」
頭で考えたことと,口から出た言葉が不一致だった,というのは,これこそ勘違いの典型で,まさに一般的な錯誤といえます.そして,民法はこういった勘違い(=錯誤)でも,特に重要な部分に錯誤があった場合(=要素の錯誤)のみ,民法を適用すると規定しているわけでした.
対して,「動機の錯誤」の場合,既に説明した通り,表示意思を形成するに至った動機の部分の錯誤をいいました.つまり,表示意思と表示行為は一致しているのです.
お分かりいただけたでしょうか.そういった意味で「表示意思と表示との不一致」とする本肢は妥当でない=×ということになります.すなわち,本問は,妥当である=○選択肢を答える問題ですから,本肢も答えではない,ということになるわけです.
続く
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