| 第1回 テーマ「意思表示(民法総則1)」 |
平成14年(2002年)度行政書士試験問題27( 問題文表示) |
6.再び選択肢2を見る
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選択肢2. 詐欺および強迫による意思表示は,心裡留保,虚偽表示および錯誤と同様に,表示に対応する内心的効果意思の欠缺する意思表示である.
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■「表示に対応する内心的効果意思が欠缺している意思表示」って何?
一通り,条文をご覧頂き,一見してすぐ「意思の不存在」グループ(心裡留保・虚偽表示・錯誤)は無効なのに対して,「瑕疵ある意思表示」グループ(詐欺・強迫)は「取消すことができる」という違いに気づかれたと思います.この違いは何を根拠としたものでしょうか.
ここで,条文を見る前に保留した問題の検討に戻りましょう.「『表示に対応する内心的効果意思が欠缺している意思表示』って何だ?」という問題でした.
言葉を一つ一つ確認しながら読んでいってみましょう.
■表示
まず,「表示」ですね.これは具体的に口に出したり,紙に書いたりして,自分の考えを自分以外の人にもわかるように示すことです.そもそも「意思表示」ということばは,「自分の意思を表示する」という意味ですね.
■内心的効果意思
次に,「内心的効果意思」です.これは,「内心(的)」+「効果意思」という二つの単語からなっています.このうち,「内心(的)」は日常語と意味の差異はあまりありません.すなわち,「内心(的)」とは,文字通り「心の内」,自分が心(あるいは頭)の中で考えていることですね.
問題は,「効果意思」なのですが,この説明は長くなりますので,後回しにします.
■欠缺
次に「欠缺」.そもそも何て読むんだ?っていう感じですね.これは「ケンケツ」と読みます.意味は「欠けていること」です.「意思の不存在」のことを先の平成16年の民法改正前までは「意思の欠缺」と言っていました.今でも本によっては「意思の不存在」のことを「意思の欠缺」と表記している本もあるくらいです.ここでは,「欠缺」を「不存在」と捉えているわけですね.
■意思表示
そして,「意思表示」.これは先にチラッと書きましたが,「自分の意思を表示する」という意味です.ただ,ここではもう少し詳しく解説してみましょう.
そもそも「意思表示」というのは,三つの部分に分解できるとされています.そして,その三つの部分の前段階に「動機」といわれる部分があると言われています……なんとなく,ややこしくなってきましたねえ.こういう時は具体的に考えるに限ります.
■意思表示の3段階の具体例
あなたがお弁当屋さんで「唐揚げ弁当ください」と言うのが,「意思表示」の典型的具体例です.この「ください」はもちろん,「無料でちょうだい」という意味ではなく,「売ってください=買います」という意味ですね.
●動機
さて,あなたがお弁当屋さんで「唐揚げ弁当ください」と言う前には,例えば「12時になったから,お昼を食べよう」とか,「お腹がすいたから,弁当でも食べよう」と思うわけですね.これが,あなたがお弁当屋さんで「唐揚げ弁当ください」という意思表示をする「動機」です.
●意思表示の3段階(効果意思→表示意思→表示行為)
「12時になったから,お昼を食べよう」とか,「お腹がすいたから,弁当でも食べよう」と思った(動機=なぜそのような意思表示をしようと思ったのか)次の段階で,あなたは「今日の昼は唐揚げ弁当にしよう」と考えます.この段階を「効果意思=その行為をしようと思うこと」と言います.先ほど,保留した「効果意思」という言葉が,ここで出てきました.そして「お弁当屋さんに行って,唐揚げ弁当くださいと表示しよう(=言おう)」と思います.これが「表示意思=その行為を表示しようと思うこと」です.そして,いよいよお弁当屋さんで「唐揚げ弁当ください」と表示します.これを「表示行為=その行為をしますと表示すること」と言います.この(1)効果意思,(2)表示意思,(3)表示行為の3段階を「意思表示」と言うわけです.そして,この意思表示を経て,相手方(この場合は,弁当屋のおじさん)に,あなたの意思が到達する,というわけです.
これをまとめると下記のようになります.
A.動機→B.意思表示(b1.効果意思→b2.表示意思→b3.表示行為)→C.相手方に到達
なお,「効果意思」という言葉は,当然「効果」+「意思」で成っているわけですが,このうち,「効果」についは,非常に重要な用語です.「要件」と「効果」という二つの語を1セットと考えて理解するとよいのですが,その説明はまたの機会に譲ることにします(「要件と効果」に関する簡単な説明は法令用語オオタマニュアルに掲載しています.興味がある方はそちらをご参照ください).
■改めて「表示に対応する内心的効果意思が欠缺している意思表示」って何?
以上の説明で,「表示に対応する内心的効果意思が欠缺している意思表示」部分の意味が把握できたのではないでしょうか.
口で言ったり,紙に書いたりする表示する行為(=表示行為)に対応する心の内での自分の考えが不存在,存在していない意思表示,つまり,心にもないことを口にしてしまったような場合ですね.具体的に考えると「今日の昼は唐揚げ弁当にしよう」(効果意思)と心の中で考えていたのに,何らかの理由でお弁当屋さんには「鮭弁当ください」と言ってしまった(表示行為)という場合の意思表示のことです.
もう気づかれた方も多いと思いますが,上記のような意思表示を「意思の不存在」グループの意思表示と言いました.具体的には,先述の通り,「心裡留保」「虚偽表示」「錯誤」の三つです.この問題は,平成14年の問題なので,当時の民法での用語である「欠缺」が使われているため,惑わされた方も多いかもしれません.
要は,本問は,詐欺・強迫は,心裡留保・虚偽表示・錯誤と同様,「意思の不存在」グループか?という問いだったのです.
当然,詐欺・強迫は表示に対応する内心的効果意思は存在するが,その意思の形成過程に瑕疵がある,とされる意思表示,すなわち「瑕疵ある意思表示」グループとされていました.そして,かたや「意思の不存在」グループには,表示に対応する内心的効果意思は存在せず,かたや「瑕疵ある意思表示」グループには,瑕疵はあるものの,表示に対応する内心的効果意思は存在するため,前者は無効,後者は取消し可能,という効果の違いがあったわけです.
従って,本肢は妥当でない=×です.本問は,妥当である=○選択肢を答える問題ですから,本肢は答えではない,ということになります.
続く
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