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■「要素の錯誤」で無効になる場合,善意の第三者にこの無効が主張できる? それでは,皆さん,ここで一つ質問をします.「要素の錯誤」で無効になる場合,善意の第三者にこの無効が主張できるでしょうか. 「要素の錯誤」による無効は,善意の第三者に対抗できる,つまり,無効の主張ができる,とされています. なぜならば,95条には,96条第3項のような善意の第三者の保護規定がないからだ,と説明されています. なぜ94条2項ではなく,96条第3項なのでしょうか. ちょっとややこしいんですが,今,皆さんは「意思表示」についての学習をしています.既に述べたように「意思表示」は「意思の不存在」グループの「心裡留保・虚偽表示・錯誤」,「瑕疵ある意思表示」グループの「詐欺・強迫」に分かれました. これはこれでもちろん正しいのですが,もう一つ別の観点から分類すると,「心裡留保」と「虚偽表示」は「嘘」というキーワードでくくることができます.両者の違いは,本人だけの嘘(心裡留保)か,相手方も巻き込んだ二人グルの嘘(虚偽表示)かという違いしかありません. 対して「錯誤」と「詐欺」も同じキーワードでくくることができます.そのキーワードは「勘違い」です.「錯誤」は,自分でうっかりして勘違いをすることですが,「詐欺」は,誰かにだまされて勘違いすることなのです. このため,「95条には,94条第2項のような善意の第三者の保護規定がない」とは,言わず,「95条には,96条第3項のような善意の第三者の保護規定がない」というわけです. それでも,皆さん,まだ,あれ?と思いますよね?確か心裡留保の93条にも善意の第三者の保護規定がなかったが,94条第2項の類推適用がどうこうといって,結局善意の第三者に対抗できない,としたのではなかったか,というわけですよね. その通りです.93条の時は「94条第2項で善意の第三者保護を図る理屈と,93条で善意の第三者保護を図らねばならない理屈が似ているため,93条においても94条第2項を類推適用することが可能」なことを根拠に,類推適用したわけです.しかし,通説・判例では結論として,「規定がない以上,95条では善意の第三者に対抗できる,と考えるべき」としていますので,95条と96条第3項では善意の第三者保護を図る理屈が別だから類推適用できない,と判断しているのでしょう. もっとも,93条に類推適用したもう一つの根拠,取引の安全保護は95条においても当然あてはまります.従って,この取引の安全保護を根拠に,あるいは,96条の詐欺の場合,同条第3項により,善意の第三者に対抗できないとする規定があり,両者のバランスを考えた時,95条でも96条第3項を類推適用して,善意の第三者保護をすべき(つまり,善意の第三者には要素の錯誤による無効を主張できないとすべき)とする有力説があるのも事実です. しかし,皆さん,こういった学説上の考え方の相違について考えるのは,もっとずっと勉強が進んでからで十分です.現段階では,あまり,このあたりのことには執着せず,「要素の錯誤による無効は,善意の第三者にも対抗できる」とおさえておいて,先に進むようにしましょう. ここでは,皆さんがこのページ冒頭に述べたような疑問を感じるかもしれないと思い.あえて説明したに過ぎません.従って,仮に皆さんの中でこのページの内容が「よくわからない」という人がいたとしても,それは気にせず先を読み進めていってください. それでは,選択肢2の検討に戻りましょう.
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